シノビガミリプレイ『楽園』 第1話
何処とも知れぬ暗い部屋に四人の忍者が集っていた。
たった一本の蝋燭は彼らの口元のみを浮かび上がらせ、光源と呼ぶには余りにも頼りない。しかし、常に表舞台の陰で暗躍してきた忍者にとってはこの程度で充分、いや、むしろ明るすぎるくらいだろう。
「月読と名乗る忍者に秘伝書が奪われた」
静寂を破るのは部屋の奥から響く声。力強さの中、若干の憂いを帯びている。
「秘伝書があった蔵の番人は再起不能。駆け付けた数十人の護衛も倒された。いずれも手練れだったにも関わらず、だ」
四人は黙って言葉の続きを待った。
命令に多くの情報は必要ない。ただ、獲物の名前が分かればそれでいい。
「月読を倒し、秘伝書を奪還せよ。秘伝の術を決して完成させてはならん!」
そうして忍務は下された。ある者は一礼し、ある者は笑みを浮かべながら音もなく去って往く。どこからともなく吹いた風に蝋燭の火も散らされ、まるで最初から誰もいなかったかのように静けさだけが残った。
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